目が覚めてしまった。昔風に言えば、丑三つ時だ。
こんな時間に起き出すと、20年ほど前に住んでいた、東京は中央区日本橋人形町の図書館で借りた、海野十三という作家の『深夜の市長』という小説を思い出す。
日中の喧噪が嘘のような、ただナトリウムランプの街灯が連なる、ロイヤルパークホテルから小伝馬町へ続く誰もいない深夜の水天宮通りを安酒片手に歩くと、街の支配者になったかのように、気分が良くなったものである。
まさに『深夜の市長』であった。
鹿児島は、蛍光灯の街灯下で縄張り争いをする野良猫の奇声以外は何も聞こえぬ、クーラーいらずの涼しい夜である