2009年08月12日

テイト、モデルにトライ…3

ウェディングらしい、クラシックをロックにアレンジした華々しい音楽が鳴り響き、光の束が降り注ぐ中、まずは霞草のブーケを抱えた純白のドレスのモデルが、ランウェイへ向け階段を下りてくる。ショーが始まった。
リハーサル通りならそうである。実は当然ながら舞台裏の私には、ステージの様子はわからない。

ところで、「喜怒哀楽」の表現が仕事である俳優は、舞台上で転倒しても、例えば今回の場合、娘を嫁がせる寂しさから泥酔しているとの演技でごまかすことが可能だ。しかし、美の具現を課せられているモデルの転倒は、料理に混入した髪の毛の如く致命的である。だから、モデルの緊張は生半可ではない。

そうこうしている間に、和装のモデル達がはけてきた。出番である。
高いヒールに白いベールの花嫁役のモデルが私の腕を取る。ゆっくりランウェイへ歩き出す。照明が眩しいのは久し振りだから仕方がないが、瞬きは少なめに。歩くのに気を遣う長い裾も、娘役の彼女はさすがにプロのモデルだ。上手く処理している。私も一歩一歩確実に歩を進める。
「あれ、テイトさんだ!?」
誰だろう。知己が見に来ているらしく、客席から声が聞こえる。

微笑を浮かべ、美しい衣装を際立たせるモデルたちとは異なり、花嫁の父親役なので、娘を手放す哀愁を漂わすことが私の仕事だ。演出家になり、俳優の過剰な演技にはうんざりすることが多かったので、自然な表情を心がける。台詞がないのは楽だ。花嫁を背の高いハーフの新郎役のモデルへ送り出すと、今度は自分の歩幅で良い。肩を落とし、わずかながら足を引きずれば、寂しい中年男の出来上がりだ。夕陽を見上げるような角度に顔を上げ、ため息を見せ、静かにランウェイを去る。
「終わった」
緊張の面持ちで控えるモデルたちを尻目に開放感に浸る。自分の出番が終われば気を抜くことが出来るのも出演者の特権だ。

かくの如く、3ステージを演じた夏の雨の日曜。パリコレの取材経験もあるというのに、出ると見るとは大違いで、下北沢の小劇場のような客席との距離が心地よく、懐かしく、そして何より楽しかった。
昔取った杵柄か、プロの面目躍如。上々の評判だったことも誌しておこう。

Photo

http://ameblo.jp/site-tate-tale/entry-10319157398.html


posted by テイト at 10:20| Comment(0) | カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。