2010年01月16日

自転車坂

キュロキュロキュロキュロキュロとタイヤが軋むのは、ブレーキに手をかけ坂道を下っているからである。
そのキュロキュロキュロの音階が、ワグナーの楽劇『タンホイザー』のフィナレーのメロディーと似ているので、譲っていただいたばかりの自転車にタンホイザー号と名付けた。

自転車がワグナーを口ずさむキュロキュロキュロの坂道は、2005年の渡仏まで居を構えた、東京都渋谷区富ヶ谷の井の頭通りと山手通りを結ぶ、車が一台通り抜けるのがやっとの裏道でもあった。

坂の頂きからは新宿の高層ビル群が見渡せ、人知れぬ夜景ポイントだった。
キュロキュロキュロとタンホイザー号で下ると、そのキュロキュロキュロに垣根からゴールデンレトリバーが顔を覗かせる家と、玄関前に寝そべっていた野良猫が散らばる家があった。小雪がちらつく日もあった。桜吹雪が切ない季節もあった。頬に風が心地よい夜もあった。

ガレージに眠るタンホイザー号のタイヤに空気を入れた。
キュロキュロキュロと走った。


posted by テイト at 15:54| Comment(0) | カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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